概要
肺がんをはじめ呼吸器・胸部全般の外科治療を行っています。
呼吸器外科は肺・気管・気管支・縦隔(じゅうかく)・胸壁・横隔膜など心臓や食道以外の、呼吸器にかかわる疾患の手術治療を担う科で肺がん、転移性肺がん、縦隔腫瘍、胸膜中皮腫などの腫瘍性疾患および、膿胸、肺化膿症、肺結核などの炎症性疾患や気胸、胸部外傷など多岐にわたる呼吸器・胸部全般の外科治療を行っています。
特色
当科では次のような治療を行っています。詳細は➡をクリックしてください。
1)体への負担を軽減した胸腔鏡下手術(Video Assisted Thoracoscopic Surgery; VATS)を積極的に行っています。➡胸腔鏡下手術について
2)複雑な手術を安全・正確に行うロボット支援下手術(Robot Assisted Thoracoscopic Surgery; RATS)を導入しています。➡ロボット支援下手術について
3)再発しない気胸手術を目指しています。➡気胸
2)複雑な手術を安全・正確に行うロボット支援下手術(Robot Assisted Thoracoscopic Surgery; RATS)を導入しています。➡ロボット支援下手術について
3)再発しない気胸手術を目指しています。➡気胸
主な対象疾患
- 肺がん
- 転移性肺腫瘍
- 縦隔腫瘍
- 胸腺腫
- 自然気胸(嚢胞性肺疾患)
- 膿胸
- 悪性胸膜中皮腫
※上記は一例です。
診療内容
肺がん
呼吸器外科が対象とする疾患では、肺がんが最も多い疾患です。肺がんはがん死亡者数の第一位であり、肺がん全体の5年生存率も他臓器のがんに比し非常に低い状況です。
しかし、近年の画像技術の発達により、外科切除でほぼ100%完治が可能なタイプの早期肺がん(CTで淡いすりガラス状に描出される小型肺がんなど)が明らかに増加しています。ただ、このような肺がんは発見できても確定診断(病理診断)が困難であることが多く、治療開始までに期間を費やすことにより、根治可能な時期を逃すことになる可能性があります。
当科では、こうした肺がんの早期発見と適切な手術により治療結果の向上を考え、PETを診断に加えることと、診断困難な小結節影(結節状の影)に対して胸腔鏡手術での診断・治療同時方法を行っています。患者さまに詳しい説明を行い、早期発見が早期診断・早期治療となるよう努めています。
肺がんの治療には、進行度により化学療法や放射線治療を加えた治療が必要になることがあります。これらには経験豊富な呼吸器内科医、放射線科医の存在が重要です。また手術に際しては、経験が要求される呼吸器手術麻酔に熟練した麻酔科医、がんの手術には欠くことのできない術中迅速診断に即応できる病理医の協力が大切になります。当院にはこれらの体制が整っており、呼吸器外科医が手術に集中できる環境となっています。
しかし、近年の画像技術の発達により、外科切除でほぼ100%完治が可能なタイプの早期肺がん(CTで淡いすりガラス状に描出される小型肺がんなど)が明らかに増加しています。ただ、このような肺がんは発見できても確定診断(病理診断)が困難であることが多く、治療開始までに期間を費やすことにより、根治可能な時期を逃すことになる可能性があります。
当科では、こうした肺がんの早期発見と適切な手術により治療結果の向上を考え、PETを診断に加えることと、診断困難な小結節影(結節状の影)に対して胸腔鏡手術での診断・治療同時方法を行っています。患者さまに詳しい説明を行い、早期発見が早期診断・早期治療となるよう努めています。
肺がんの治療には、進行度により化学療法や放射線治療を加えた治療が必要になることがあります。これらには経験豊富な呼吸器内科医、放射線科医の存在が重要です。また手術に際しては、経験が要求される呼吸器手術麻酔に熟練した麻酔科医、がんの手術には欠くことのできない術中迅速診断に即応できる病理医の協力が大切になります。当院にはこれらの体制が整っており、呼吸器外科医が手術に集中できる環境となっています。
動画「肺がんのお話~手術治療編~」
縦隔腫瘍
右肺と左肺に挟まれた部分を縦隔といいます(図①)。縦隔には心臓だけでなく、空気の通り道である”気管”や食べ物の通り道である”食道”など、大切な臓器があります。そこにできる腫瘍を総称して縦隔腫瘍と呼びます。
胸部レントゲン写真、CT検査、MRI検査を行い、最終的な診断は切除して行います(図②)。
胸部レントゲン写真、CT検査、MRI検査を行い、最終的な診断は切除して行います(図②)。
縦隔腫瘍では胸腺腫、奇形腫などが多く、当科ではこれらを切除するために鏡視下手術を行ってきました。従来、これらの腫瘍の治療は胸の中央に大きな傷をつけ胸骨を割る、正中切開を必要としていました(図③)。当科では手術支援ロボット”ダヴィンチ"を用いて、胸骨を切断することなく同等の治療を行っています。これを”剣状突起下アプローチによるロボット支援下前縦隔腫瘍切除術”(長い名前ですね)といいます(図③)。手術支援ロボット"ダヴィンチ”を用いることで、縦隔という狭い空間でより複雑な操作を安全に行えると考えています。呼吸器外科のロボット支援下手術についてもご参照ください。もちろん、胸の壁や周囲の臓器に浸潤している症例では、従来の方法で手術を行わなければなりません。そのような場合でも、内科や放射線科と連携を取り、手術前の化学療法や放射線療法などを組み合わせて、できるだけ体への負担を減らすような治療を心掛けています。
気胸
気胸は肺から空気が漏れて、肺がしぼんでしまい、肺と胸の壁(胸壁)の間(この空間を“胸腔”と呼びます)に空気がたまった状態をいいます。何のきっかけもなく起こる気胸を自然気胸と呼びます。
気胸の原因は、もともと肺に弱い部分(これを”ブラ”と呼びます)があり、そこに穴が開いて空気が漏れることです。軽い気胸であれば安静で治ることもありますが、漏れた空気がどんどん胸腔にたまって、心臓を圧迫して心臓が止まってしまうこともあります(これを”緊張性気胸”と呼びます)。
気胸の治療は、まずたまった空気を外へ出すために胸腔に管(ドレーンと呼びます)を入れます。肺からの空気の漏れが止まって、肺が広がればドレーンを抜いて治療は終了となります。これを保存的治療と呼びます。保存的治療で治らない患者さんは手術になります。
手術はほとんどを胸腔鏡下で行っています。胸腔鏡下手術とは胸壁に2-3か所の穴を開けそこからカメラ(胸腔鏡と呼びます)と器具を挿入して行う手術のことです。カメラでブラを探しだして処置をします。当院での処置の方法は、大きく分けて3通りあります。
①ブラを含めて肺の一部を切除する(ブラ切除術)。
②ブラを焼灼して穴を塞ぐと同時に補強する(ブラ焼灼術)。
③ブラの根元を縛って空気が入らないようにする(ブラ結紮術)。
いずれの方法でも、処置後にポリグリコール酸という素材でできたシートを貼り付けて肺を補強します。どの処置を行うかはブラの性状や、できている場所によって決めています。
気胸の原因は、もともと肺に弱い部分(これを”ブラ”と呼びます)があり、そこに穴が開いて空気が漏れることです。軽い気胸であれば安静で治ることもありますが、漏れた空気がどんどん胸腔にたまって、心臓を圧迫して心臓が止まってしまうこともあります(これを”緊張性気胸”と呼びます)。
気胸の治療は、まずたまった空気を外へ出すために胸腔に管(ドレーンと呼びます)を入れます。肺からの空気の漏れが止まって、肺が広がればドレーンを抜いて治療は終了となります。これを保存的治療と呼びます。保存的治療で治らない患者さんは手術になります。
手術はほとんどを胸腔鏡下で行っています。胸腔鏡下手術とは胸壁に2-3か所の穴を開けそこからカメラ(胸腔鏡と呼びます)と器具を挿入して行う手術のことです。カメラでブラを探しだして処置をします。当院での処置の方法は、大きく分けて3通りあります。
①ブラを含めて肺の一部を切除する(ブラ切除術)。
②ブラを焼灼して穴を塞ぐと同時に補強する(ブラ焼灼術)。
③ブラの根元を縛って空気が入らないようにする(ブラ結紮術)。
いずれの方法でも、処置後にポリグリコール酸という素材でできたシートを貼り付けて肺を補強します。どの処置を行うかはブラの性状や、できている場所によって決めています。
手術動画
再発は、保存的治療では30%~50%に認めるとされています。手術によって気胸が再発するリスクを下げることができます。しかし、残念ながら気胸は手術を行っても一定の割合で再発します。多くの病院では、気胸に対して胸腔鏡下ブラ切除術(上記①)を行っています。しかし胸腔鏡下ブラ切除術の術後再発率は高率で、特に30 歳未満の若年者においては8.8%~26.6%と報告されています。その原因は、切除した場所の近くに新しいブラができて、これが破裂するためと考えられています。最新の研究では切除部位と、その周辺にブラが新生していることが証明されています。そこで当院では、肺を切除しない治療、胸腔鏡下ブラ焼灼術(上記②)を行っています。
その他の疾患
胸部外傷
交通事故や転落・転倒などが原因で胸に強い力がかかると、胸の壁を支えている骨が折れることがあります。肋骨骨折や胸骨骨折がこれにあたります。衝撃が強いと胸壁だけでなく、その中にある肺も損傷します。肺の損傷により出血し、肺がしぼんで血液が胸にたまった状態を外傷性血気胸といいます。放っておくと命にかかわります。そのため胸部の外傷は緊急処置が必要な場合があります。このような胸部外傷に対しては、救命救急センターが初期対応し、緊急手術が必要な場合に備えて当科が待機しています。
膿胸
胸の壁(胸壁)と肺の間の空間(胸腔と呼びます)に感染を起こし、膿がたまった状態を“膿胸”といいます。主には肺炎などの肺の中の感染が原因となって起こります。治療は、まず、抗生物質の投与とともに、管(ドレーンと呼びます)を胸腔に入れて膿を出す、胸腔ドレナージを行います。この治療で改善が得られない場合は手術で膿をかき出して、胸腔内を掃除する必要があります。当科ではこの手術を胸腔鏡で行っています。目に見えない細菌が相手ですから、一度の手術では完治しない場合や、従来から行っている胸を大きく開ける“開胸手術”になることもあります。胸腔鏡下手術で治療できるかどうかは、膿胸の発症からどれだけ早急に手術が行えるかが“カギ”を握っています。すなわち、どの段階で手術が必要なのかを適切に判断しなければなりません。当科では迅速に膿胸の治療にあたっています。
気胸センター
当院は気胸センターを開設しました。呼吸器外科、呼吸器内科と救命救急科が協力して24時間体制で対応しています。また、繰り返す気胸に対しては再発率を下げる目的で手術(待機手術と呼びます)を行うことがあります。受験や就職などの社会的理由で気胸に対する待機手術をお考えの方は呼吸器外科医師にご相談ください。
胸腔鏡下手術について
手術では全ての疾患に対し、傷が小さく低侵襲(体への負担が少ない)な胸腔鏡下手術を積極的に取り入れています。
胸腔鏡下手術とは、胸に小さな穴を空け、そこからカメラが先端についた胸腔鏡や手術器具を入れて、映像をモニターで確認しながら行う手術です。これまでの、胸を数十センチ切る手術に比べて、肋骨や大きな筋肉を切らずに済むことと傷が小さいことで患者さまの体への負担が少なく、術後の回復が早いのが特徴です。その一方で、2次元のモニターを見ながら行うため、医師側に高度な技術が必要となります。
自然気胸はほぼ100%が胸腔鏡手術です。患者さまに、病態と治療方法の選択を詳しく十分に説明して、社会的に(学生さんなども含め)早期に復帰でき、可能な限り再発を少なくできるよう努めています。
呼吸器外科領域において、こうした低侵襲手技の導入により、クリ二カルパスでの治療が可能となり、肺がんで術後1週間から10日程度、良性疾患・自然気胸などで術後2日から4日程度で、退院が可能となっています。
胸腔鏡下手術とは、胸に小さな穴を空け、そこからカメラが先端についた胸腔鏡や手術器具を入れて、映像をモニターで確認しながら行う手術です。これまでの、胸を数十センチ切る手術に比べて、肋骨や大きな筋肉を切らずに済むことと傷が小さいことで患者さまの体への負担が少なく、術後の回復が早いのが特徴です。その一方で、2次元のモニターを見ながら行うため、医師側に高度な技術が必要となります。
自然気胸はほぼ100%が胸腔鏡手術です。患者さまに、病態と治療方法の選択を詳しく十分に説明して、社会的に(学生さんなども含め)早期に復帰でき、可能な限り再発を少なくできるよう努めています。
呼吸器外科領域において、こうした低侵襲手技の導入により、クリ二カルパスでの治療が可能となり、肺がんで術後1週間から10日程度、良性疾患・自然気胸などで術後2日から4日程度で、退院が可能となっています。
ロボット支援下手術について
クリニカルパス
お知らせ
患者さまへ 学術研究へのご協力のお願い
当院では、医療の質の向上を目的として、患者さまの症例を登録して学術研究に役立てるデータベース事業に協力しています。
▶NCD(National Clinical Datebase)について
▶肺癌登録合同委員会 全国肺癌登録事業・ 第8次事業:胸腺上皮性腫瘍の前方視的データベース研究・ 第7次事業:2010年肺癌手術症例の全国登録調査
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▶肺癌登録合同委員会 全国肺癌登録事業・ 第8次事業:胸腺上皮性腫瘍の前方視的データベース研究・ 第7次事業:2010年肺癌手術症例の全国登録調査